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出版物紹介:戦争と検閲 石川達三を読み直す [河原理子:岩波書店2015年]

Senso to kenetsu

本書は、石川達三(1905~1985)が1938年に執筆した小説『生きている兵隊』が新聞紙法*違反の容疑で起訴され、発禁処分となった事件に焦点を当て、事件の根幹となる新聞紙法と、それに基づく言論統制の実像を描き出した作品です。当時の裁判記録と新聞報道、そして石川自身の手記などの分析を通じて、起訴の経緯や石川がこの作品に託した思いなどが、詳細に論じられています。

戦後、新聞紙法が一時停止されたことにより、この作品は1945年末に無事出版されることとなりました。しかし、その一方で、1946年に執筆、出版予定だった『戦いの権化』は民間検閲局(CCD)の検閲のもとで発禁となり、占領下で日の目を見ることはありませんでした。プランゲ文庫には、この『戦いの権化』のゲラやCCD文書が残されており、これも本書の中で紹介されています。

米軍による戦前の検閲解除に喜んだのもつかの間、石川を含むこの時代の表現者たちは、言論統制が戦後の新しい検閲システムによって続けられることを悟り、その無念さは、作家高見順の言葉によって的確に表現されています。
『アメリカが我々に与えてくれた「言論の自由」は、アメリカに対しては通用しないということも分かった』(高見順「敗戦日記」、本書231ページ掲載)

*1909年5月施行、1945年9月停止、1949年5月廃止
この記事は岩波書店編集者の許可を得て掲載しています。

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